いちごのヘタ

頭の中にいれておいてもしょうがないこと

ズレた歯車でアートの価値について考えた 2020/08/19

区切りとしての最終面接。まだ百貨店も開かないような時間に渋谷に到着。融通がきかないオンライン講義の確認テストを受けたいがために、座れるWi-Fiスポットを探し求めた。安易に見つけられたのがヒカリエの地下にあったスタバであったので、わざわざテストを受けるためだけに割高なコーヒーを買って、テストの環境を整える。

自粛環境になってから初めて、スタバのイートインを利用したが新しい生活様式の影響で半分近く座席が使えない状況になっていて、PCを開ける席が全く空いていない状況。仕方なく、丸太のような椅子に座りながら周囲を入念に確認する。24歳になってまで、ましてや渋谷の商業施設で、田舎のショッピングモールのフードコートでやるような飽き座席をハイエナのように睨みを効かせながら確保する日がくるとは思ってもみなかった。結果、百貨店の空き時間までの時間を潰していたお婆ちゃんの席を確保し、テストに間に合いなんとか受講できたが、面接前のコンディションとしては決して良いとは言えなかったな。スタバのワンモアコーヒーチケットを使うことなく、早々とスタバを後にした。

何度目の最終面接だろう。面接担当は踵を潰してサンダルを履いている中年であった。どこか自分のことを斜めに見ているようで、自分の就活のスタンダードだと思っていた就活仕草を全て斜に構えて解釈してこられて、かなりダメージを食らった。面接の中盤で、少し諦めだして気を抜いて話し出したタイミングで、「あなたを動物に例えるとなに?」という小学校で配られるようなプロフィール帳の1項目のような質問をされた。すかさず、従順な犬のような勤勉さと上下関係への理解の項目をプッシュすると「キミ、気持ち悪いってよく言われない?」なんて一言。かなり効果のあるボディブローだった。正直もう就活に向き合う体力がないので、ここで決めてしまいたいという安直な気持ちがあったが、入社してもないのにここまで効くボディを打ってくる人の下でやっていけるのか不安になってしまった。面接が終わったら買い物もしてやろうと考えていたが、そんな気力も一気に削がれて自宅に逃げ帰ってしまった。

同じメニューの昼食を3日連続で食べてやった。ラーメンのために20円だけ出してもやしをスーパーで買うのもいかにも貧乏学生って感じで恥ずかしかったが、これがないとラーメンは始まらない。暑さで肉体を、サンダル姿の面接担当に精神を、両方の部分でダメージを食らっている身体に強引に豚骨しょうゆ味のスープを染み込ませ、少しだけ寝た。

起き抜けで、志望度の低いベンチャー企業のグループディスカッション。人事担当はいかにもベンチャーって感じの女性。グループディスカッションのテーマは就活をする人としない人のそれぞれの理由付け。ここまで残っている就活生。マジで皆が消極的で参ってしまった。5月に行ったグループディスカッションとは雲泥の差だった。一回レールに乗せればだいたい喋ってくれると思っていたのに、思った以上に話してくれない。皆が皆誰かに不満を持っているけれど口に出さない、他人任せな時間と空間がひしひしと伝わってきた。グルディス終了後の人事からのフィードバックで、7人総じて怒られた経験って初めて。自分のせいでもないし、志望度も低い企業の人事からどうしてここまで言われないといけないのかまったくもって理解できなかったし、あとはどうとでもなってほしい。

何かのニュースで、障害者の方が創作したアートの展示について紹介されていた。色んな作品が紹介されている中で、特に注目されていたのが宮沢賢治の文章を関西弁に直したモノを、なんらかの障害を持った人が書道で書き記したものが評価されている瞬間だった。障害者が創作したという一点だけで、そんなオマージュが大々的に美術館に展示されるのはなんとなく釈然としなかった。自分もこのまま生活に困ったら、利き腕と反対側の腕でも切り落としてやって、詩でも書いて売ってみたら評価してくれるのだろうか。根性が曲がってるからそんなことを考えてしまった。

こんなニュースを見た後に風呂に入りながらアートの価値について考えた。どんなに凡庸なものでも、誰かがアホみたいな金額で落札したのなら、その瞬間にその作品には「芸術性」や「独自性」が発生したりするのかもしれない。大事なものは作品の質ではなく、その作品に心を動かされた人の質なのかもしれない。そう考えると金持ちになるって面白いのかも。自分が稼いだ金で、適当な素人の絵を高額で買い叩いた瞬間に、自らがその絵に芸術性を見出せるような可能性だってあるのかも。そう考えると一回でいいから金持ちになってみるのもありかもしれない。なれないけれど。自分が芸術性という概念を創作して、世間に新たな価値観を提供できるのかもしれない。ちょっとワクワク。これとおんなじベクトルで、ライブアイドルとかに熱心に投資しているおじさんとかも、いるのかもしれない。全部想定の話。誰かにぶつけたいな。