いちごのヘタ

頭の中にいれておいてもしょうがないこと

カラオケオールの途中でラーメンに逃げてしまう病

「カラオケオール」

”カラオケ”で”オール”。カレーもトンカツも子供が大好きだから両方まとめて提供したろ!くらいの浅はかな組み合わせだけど、かなりポピュラーな羽目の外し方なのではないかなぁと思う。

カツカレー的な思考で作られたであろうコンテンツの割にはお酒が入った状態で始発を待つにあたって意外と合理的なソレと自分はかれこれ5年くらい向き合っている。

 まずはじめに断っておくと、自分はこのカラオケというものがどうにも好きではない。自分の聴いている自分の声とマイクを通じて聞こえる自分の声があまりにも違いすぎてまず毎回少しテンションが落ちる。

あぁなんて小物感あふれるメリもハリもないような声なんだろう、こんな声で二十数年も生きてきてしまったのかとデンモクの充電器のコードでも使ってその場で絶命したくなるのをいつもすんでのところでこらえている。

 

アルコールが入ってない状態でのカラオケなんかもってのほか。

いくら気を許せる友人とはいえ一曲分の時間、4分弱程度自分の趣味を密室で押しつける行為を何セット行うの?そもそもレパートリーも雀の涙くらいしかないような状態でその同行してるメンバーに気を使いながら歌いたくもないジャニーズ主演のドラマの主題歌とか挟んでみたり、コブクロみたいなアーティスト入れてみたら丁寧にパート分けとかされてるから気を使ってるのかなんなのか知らんけど強引にデュエット申し込んでくるし、しかもそういう輩って「この曲が本当に好き!」ってわけでもなく「この曲は俺も知ってる!」くらいのテンションでマイクを持ってくるから大体サビ部分とかの「その曲を歌うにあたって最も歌いたい部分」のパートを歌っている方を奪ってくる。なんで俺がちょっと気を使って高音パート歌ってハモらないといけんのか勘弁してくれ。そのくせサクラップとかちょっと難易度高いとこはごまかしつつパスしてくんのもやめてほしい。

 

こんなん思ってる陰キャラをよそに軽音部出身の全身下半身みたいなカースト上層はこれみよがしに自慢のよく通る声でRADなんちゃらやらEATSではないほうのUVERやらをガンガン歌い散らかす。聞いてもいないのに君の前世がどうとかこうとか叫んでくるんだからたまったもんじゃない。

 

さて、ノンアルコールでもまともな人間がまともでなくなる魔境「カラオケボックス」にアルコールを入れた人間たちをぶち込むとどうなるのか、勘の良い読者は大方察してはいるとは思うが、もう少しだけカラオケ大嫌いトークに付き合ってほしい。

 

 

そもそもアルコールが入った状態でカラオケは、おおかた二次会以降での開催になりがちだ。

一次会でああでもないこうでもないとある程度盛り上がった流れで、会話のネタが尽きたが帰宅手段である電車も尽きているような状態でカラオケに向かう。

そうなるともはや会話は二の次となりとにかく盛り上がろう!とよくわからないがアップテンポな曲をゴリゴリ流していくしかなくなってくるのである。にわかには信じがたいが世の中には酔いが回ると大きい声を出したくなる輩が一定数は存在していて、常時そのワァキャアした状況を維持するのに切磋琢磨していく。

 

その流れで盛り上がっていないと判断されると、テーブルのグラスに注がれているアルコールがなくなるまで無限に続くコール。一次会でやりつくしてあったであろうそれが現代兵器デンモクの力を借りてよりスマートにより悪質にチューンナップされて返ってくるのだ。

 この世紀末みたいなノリで始発まで参加者が乗り切れればいいのだが、みんながみんなそうもいかない。

眠気に耐えきれなくなる場馴れしていない女子とそれに便乗してツーショットを狙いにいく男子。両者の攻防が始まるなかで、テンションと一緒に体調もぶっ壊し始めるやつも出てきてその流れでカラオケ店のトイレもぶっ壊す勢いで体内から何から何まで逆流させだすし、そんなマーライオンを一人にするわけにもいかないとかいう名目で、トイレ前でひたすらにどうやったらそこまで気持ちを込めずに言葉を発せられるのかわからんくらいに無感情な「ダイジョウブー?」を繰り返す係が2人くらい現れる。

多分はま寿司のペッパーくんのほうが感受性豊かなんじゃねえかなってくらいに無感情に心配している旨をマーライオンに伝えているのだが、マーライオン自体は自分のことで精一杯だし、無感情なペッパーくん以下の人類はあのうるさい空間から逃げ出すことに全力で、その逃げ場としてマーライオンの管理人に就任しているので実にwin-win?な関係性で双方完結していたりする。

上のどれにもなりきれない人間は、エネルギー源がおそらく原子力かなにかであろう声の大きい輩と、何かを消したりリライトしたり、無限大の夢の後のやるせない世の中を語りだしたり、アガりまくる夏の中で誰が一番ヤバくなれるかどうかを競い出したりする。

自分はそれのどこにもなりたくないし、エネルギー源は糖やデンプンなので26時を過ぎたあたりから疲れだしてくる。

面白い小話を披露しようにも大音量で音楽が流れ続けているため誰の耳にも届くことはない。ただちまちまと薄い烏龍ハイをすすり続ける。ご利益のないビリケン様みたいな状態になっているのだがまだまだ電車は動いてくれない。そうこうしててもいつマーライオンにされるのかは時間の問題なので、小銭入れを握りしめて今日も自分は繁華街へ繰り出すのだ…。

 

 

「ラーメン」という処方箋

 

電車も止まった深夜帯。ネオンを光らせているのはアルコールを提供するお店かあるいはやらしいネーチャンのお店、もしくは24時間年中無休なコンビニか吉野家か、あるいはひたむきなラーメン屋さんくらいだ。一次会で提供されたおざなりな揚げ物やら漬物やらしか口に含んでいない状況でビタビタにアルコールに浸された自分には圧倒的に炭水化物と塩分が足りていない。本能が自然と足をラーメン屋へと向ける。本能のままに自動ドアの先に進むと、深夜帯であるのにもかかわらずに眠気を1ミクロンも感じさせないような「いらっしゃいませ!」で出迎えてくれる。

カウンターへと通されると同時に突き出されるのは程よく冷えたお冷。あの密室では消して提供されなかったアルコールの混ざらない純粋なH2O。焼けるように熱い喉を程よく冷やすと共にアルコールでやられてかけている三半規管がスッとまともになる。

カラオケに奪われかけていた自我を取り戻す。程よい喧騒と店内BGMに耳を傾ける。やはり流行のJPOPだとかが流れているのだがそれも心地よい。アーティストが歌うのと素人が歌うのではこんなにも違うのかと再確認していると「おまたせしました」と親の顔よりも恋しいアイツ「中華そば」がドン、と姿を現してくれる。

 

醤油に味噌に塩に…種類はそれぞれだが、こういうときに食すラーメンはもう種類とかはなんでもよいのだ。どんなにコンディションが悪かろうともこってり豚骨が食べたければそちらに足が向かうし、そうでないときは優しいダシベースの塩スープが自分に居場所を与えてくれる。自分が食べたいものは自分が一番理解している。

酩酊しかけていてもそれは変わらない。スープをすすればあれほど欲していた塩分が体の中に最もベストな状態で入り込んでくるし、これはたまらんと麺をすすれば自然と元気が出てくる。

蓋を開ければ小麦なのだがそれを感じさせないポテンシャル。もう箸が止まらんしまともな夕食を食べていない自分のコンディションがどんどんベストなものに近づいていく。

すべてすすり終えた頃にはアルコールに疲弊していた自分はもういない。残ったスープとお冷の無限コンボを満足するまで満たしていけば原子力で動き続けるチーム鉄腕アトムとも戦えるもうひとりの自分が誕生した。ワンピースとかコーラで動くキャラとヵいたけどアレには一ミリも共感できないけど醤油スープで動くキャラとかだったらもうノンフィクションの域だと思えるくらいに身近に感じられる。

 

4分弱でワンセットののど自慢大会を5セットほど見送り、命の源ラーメンをすすりカラオケオールを乗り越えるライフハック、皆さんもぜひお試しください次の日にかなり効きます。だから自分がカラオケ行って姿見えなくなっても探さないでくださいお願いします。